
「あみぐるみ」で寄り添うをかたちに! 「私にもきっとできる」から始まったものづくり
インタビュアー / 大野 佳子
- あみぐるみ作家 / うららか屋 みつ
- SE、経理職を経てハンドメイドの世界へ。洋裁から編み物へと活動を広げ、あみぐるみ作家としてオーダー制作や発信を行う。ONthe UMEDAの非公式キャラクター「おんざちゃん」を手がけ、人と場所に寄り添うものづくりを届けている。
「ワイドパンツの成功体験」が導いたハンドメイドへの道
これまでのお仕事や暮らしについて教えてください
大学でプログラミングを学び、SEとして就職しました。システム開発の現場は想像以上にスピードが速く、日々勉強が欠かせませんでした。3年ほどで「長く続けるのは難しい」と感じ、社内異動を申し出ました。それから育児を機に退職するまでの9年間は、経理職として過ごしました。
夫の転勤で、生後7カ月の子どもを連れて大阪から横浜へ。頼れる人もいない中での子育ては心細いものでしたが、少しずつママ友もでき、日々を重ねていきました。
横浜の生活にも慣れてきたころ、ふたたび転勤となり、大阪に戻ってきました。現在は、社会保険労務士事務所でSEの経験を生かしながら働いています。
ハンドメイドとのかかわりをお聞かせください
大阪に戻り、高校時代の友人と再会したとき、衝撃的な出来事がありました。
友人は、自作のワイドパンツとカットソーを身に着けて現れたのです。その装いがあまりにもおしゃれで、とても手作りには見えませんでした。もともと、彼女は私と同じく「ハンドメイドとは縁のないタイプ」でした。そんな友人がお店で売っているような服を作り、着こなしている。その姿を見たとき、「友人にできたのなら、私にもきっとできる!」とやる気に火がつきました。
私は同じ型紙を揃え、ミシンを買い、友人に教えてもらいながら初めての服づくりに挑戦しました。見よう見まねで仕立てたワイドパンツは思いのほかうまくでき、周囲からも好評でした。私はこれを「ワイドパンツの成功体験」と呼んでいます。それからハンドメイドが楽しくなり、出来上がっては人に贈るようになりました。
「SNS越しでも人柄は伝わる」
あみもの作家に出会い、編み物の世界へ
あるとき、職場の人から「レインバッグが欲しい」と相談を受け、「撥水加工のふろしき」を思いつきました。形も自由で、持ち運びにも便利。端切れの布地をシュシュにして、結び紐として工夫しました。
職場でも喜ばれ、メルカリでも売れました。もっといろんな人に見てもらいたい。その思いから、YouTubeを始めると、「#furoshiki(ふろしき)」をきっかけに海外の方にもチャンネル登録やコメントをいただけました。
「もっと広まらへんかな…!」と、さらにやる気が湧き、Twitter(現:X)も始めました。これまでに作ってきた洋服や布小物を投稿していく中で、「#ハンドメイド好きとつながりたい」というタグから、あるあみもの作家さんのアカウントとつながりました。
その作家さんの作品を眺めるたび、私はその人の持つ人柄に惹かれていきました。
たとえSNSであっても、投稿者の人柄や雰囲気は、どこかにじみ出てくるものだと感じます。「そういえば、編み物をしてみたかったんだよね…」と、心の奥にあった気持ちが、ゆっくりとふくらんでいきました。
そう思ったら、次はもう編んでみるしかありませんでした。
「あみぐるみに目を入れた瞬間、“存在”に変わった」

一針ずつ丁寧に編む
これまでに編んだものは、マフラーとコードバッグひとつだけ。他にも挑戦をしてみたことはありましたが、編み方が分からなくなり、途中で手が止まっていました。けれどYouTubeで編み方を見ると、引っかかっていた部分が分かるようになり、小さな作品から少しずつ形にできるようになりました。
「編めなかったものが、自分で編めるようになる」。その喜びでいっぱいでした。それから編み物にのめり込み、日本手芸普及協会のオンライン講座を受講しました。かぎ針編みからはじめて、課題を重ね、最後にはベストを編み上げられました。そして次に編みたいものを探して、YouTubeを見ていたとき、「あみぐるみ」に出会いました。
初めて作ったあみぐるみは、トラでした。ちょうど寅年だったのです。最後の行程として目を入れた瞬間のことでした。それまでただの毛糸だったものから、ひとつの「存在」に変わったのを感じました。
その後、知人から「アイコンのイラストを、あみぐるみにしてほしい」と声がかかります。そこには、肩に小さなクマを乗せた姿が描かれていました。クマは編んだことがありませんでしたが、また「私にはできる気がする!」とやる気が湧き、制作に取り掛かりました。

肩乗せくまさん
「肩乗せくまさん」をきっかけに、口コミが少しずつ広がり、オーダーメイドの予約が埋まるようになりました。
ひとつひとつの作品に向き合い、編み続ける中で、次第にオリジナル作品もつくってみたいと思うようになりました。猫やユニコーンなど、気になる動物たちを形にしていきました。
そうして、2025年11月、新しくハピフェネちゃんが生まれました。

ハピフェネちゃん
「おんざちゃんは、囲炉裏に集う人を包む“湯気”です」

おんざちゃん
「おんざちゃん」ができるまでを教えてください
私がONtheを知ったのは、昨年の「ONthe BOX オーナー募集キャンペーン」でした。
「ONtheってどんなところなんだろう?」そんな興味から、ONtheのインスタグラムを眺めていました。投稿には、館内の案内役として、ある航空会社のぬいぐるみが登場していました。
「もしかして、ONtheにはキャラクターがいないのでは?」と気づき、頭の中で「ONthe UMEDAキャラクター構想」が動き始めました。初めてONtheを訪れた際、私は店長の中山さんに、キャラクターの提案を早速持ちかけました。
中山さんは、そのときのことをこう振り返ります。
「キャラクターのコンセプトからイメージまで、細かく書かれた提案書を持ってこられて、驚きました。私からは、“ONtheらしさ”と“梅田に関係する動物”という希望をお伝えしました」
「ONtheらしさ?梅田にちなんだ動物…!?」
中山さんのご意見に戸惑いながらも、どうしても形にしたいという思いがありました。ONtheのホームページを何度も見返し、理念を読み込みました。
そうしてたどり着いたのは、「特定の動物ではない、何者でもない存在」でした。
おんざちゃんは、囲炉裏を囲んで人が集う、その中心に置かれたやかんから立ちのぼる“湯気”です。形を持たず、その場にいる人や空間をやさしく包み込みます。
また、湯気をモチーフにした文様「立湧(たてわく)」は、格式と運気上昇の意味を持ち、オンザとの重なりを込めています。こうして、非公式キャラクター「おんざちゃん」が生まれました。
おんざちゃんは、受付と館内の2か所にいます。
月に1度、季節や行事に合わせて装いを変えているので、ぜひ注目してみてください。
「おんざちゃん、おはよ~」と挨拶してくれる人がいるとお聞きして、本当にうれしいです。
キャラクターは、作って終わりではなく、育てていくものだと感じています。これからますます、おんざちゃんをたくさんの人に知ってもらって、受け入れていただいて、和んでもらえたら何よりも幸せです。
「ONthe BOX」で広がるつながり
どのようにONtheをご利用されていますか?
私は、ONthe BOXのみを契約する「ONthe BOX会員」として利用しています。きっかけは、オンザ会員のスミレ(吉岡真美子)さんからの紹介でした。
これまで、「ONthe BOX 1日支配人」や「出張 ONthe BOX LIVE」に参加させていただきました。「1日支配人」では、たくさんの方とお話をする機会が生まれました。
また、「出張 ONthe BOX LIVE」イベントでは、ラジオパーソナリティ・たけちゃんこと奥村武資さんとのトークセッションに登壇させていただきました。
「人前で話すことは何もない」と思っていましたが、おんざちゃんに込めた思いを話していたら、あっという間でした。たけちゃんと出会うことができ、楽しいお話の時間を過ごし、大きな経験になりました。

出張ONthe BOX LIVEでのトークセッション
ぜひまた、「ONthe BOX 1日支配人」をしたいと思っています。
1日支配人をしながら、おんざちゃんの帽子を編んで、出入りする人たちと会話を重ね、利用者同士の交流のきっかけになればうれしいです。
心に寄り添い、場所を包む「あみぐるみ」づくり
これからの展望をお聞かせください
あみぐるみ作品の毎日投稿を始めてから、4カ月が経ちました。
「とりあえず毎日投稿しよう!」と意気込んで始めましたが、続けていくうちに、届け方の工夫が必要だと感じるようになりました。「あみものライブ配信」や「オンラインお迎え会」も始めました。SNS越しであっても、私があみもの作家さんの人柄に惹かれたように、何かを感じてもらえるような発信を目指しています。
私はあみぐるみを編むときに、心に寄り添える存在でありますようにと、思いを込めて編んでいます。ふと気分が落ち込んでしまうとき、さみしさや辛さを抱えているとき、言葉にするのも苦しいときが、誰にでもあると思います。
おんざちゃん、ハピフェネちゃん、これから生まれてくるあみぐるみたちが、心のよりどころになり、その場所をあたたかく包む――そんな役割を担えたらと願っています。
編集後記
テーブルに置いた「初代おんざちゃん」を挟んでのインタビューのひとときでした。
湯気がモチーフと聞いて、「たしかに湯気にしか見えなくなってきた…!」と、イメージが一変しました。
おんざちゃんを見るたび、「大丈夫やで」とそっと見守られているようで、元気をもらっています。
うららか屋 みつさん
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(文:大野 佳子、写真:中山 雄治)






