「できない」という思い込みを捨てれば可能性は広がる
ONtheに関わる人々、利用する会員様にスポットを当ててその人生に迫るインタビュー特集「穏坐な人々」。今回お話を伺ったのは、キャリアコンサルタントの山田 弘志さんです。山田さんのキャリアの考え方、積極的に発信されているSNSについてお話を伺いました。
インタビュアー / さとう れいこ
- キャリアコンサルタント / 山田 弘志
- 食品メーカーの人事部に所属。人材育成やキャリア支援を担当している。
2級キャリアコンサルタント技能士/総合武道空道二段
思考を変えたらできるようになったハイキック
ーー『昭和40年男の空道とキャリア道〜最強・最高の自分を更新して、他者の「自己形成」を応援する〜』
フォロワー数5,000人を超える山田さんのTwitterアカウントのプロフィールだ。山田さんの趣味は総合武道である空道。武道の考え方とキャリアを掛け合わせることになったきっかけは、山田さんのある経験からだった。
大学生から少林寺拳法を始め、33歳で空道に入門。ずっと武道が好きでやってきましたけれど、自分は体が硬いので技はパンチをメインでやっていたんです。蹴り技、とくにハイキックってかっこいいけれど、自分には到底「できない」ものだと思っていました。
ある日、師範代が僕に「何かやりたいことないですか?」と聞いたんです。師範代はその日のメニューについて聞いたつもりだったらしいのですが、僕は勘違いして「ハイキック蹴りたいんですよね」と答えたんです。心の声が出たんでしょうね。
そしたら師範代は「できますよ」と言って、ある3つの動きを教えてくれました。それぞれすごく簡単な動きで、蹴りが苦手な僕でもその場ですぐできたんです。
すると師範代が「ハイキックというのは、今の3つの動きの繋がりです。この3つの動きができるということは、山田さんはハイキックできるんです」と。
絶対できないと思い込んでいたハイキック。それが「できる」と思えるようになってからは、稽古の取り組み方が変わりました。正直、今まで蹴りの練習は稽古だからとりあえずやっていた、という感じ。できるなんて思っていないわけですから、身が入っていなかったように思います。
でも、1年ほど練習するとちゃんと結果がついてきて、ハイキックできるようになったんです!武道を始めた学生時代からずっと「できない」と思い込んでいたのに、50代でハイキックが「できる」ようになった。
マインドが変われば行動が変わる、というのを実感しましたね。
ーー試合でもハイキックが蹴れるようになった山田さん。できる技が増えたことで、視野が広がった。そしてそれは、キャリアにも通ずるといいます。
人間は自分ができることを前提に物事をみています。ハイキックなんて蹴れない、と思っていたときは、パンチが届く視野でしかみれていなかった。でも、蹴れるとなったらその分視野が広がり、自分の可能性も広がっていくんです。
これってキャリアも同じですよね。
仕事って自分の能力はこんなもんだ、と型にはまろうとしてしまいがちです。自分が今持っている能力を活かす場所を探す。
本当に自分の力をすべて使い切ったのか?まだまだ伸びるはず。型にはまったままでは、自分の器は広がらないんです。
自分の能力はこうだと凝り固まっていたものが、「やればできる」という思考に変わっただけで、実際にできるようになる。
だって僕はずっとできないと思っていたハイキック、50過ぎで蹴れるようになったんだから。
営業から人事へ、落ち込んだことで始まったキャリアコンサルタントへの道
ーーキャリアコンサルタントとして社内外で活動されている山田さん。長年人事の仕事に携われていたのかと思いきや、意外なことに元は営業職だったといいます。
社内公募で人事部へ異動したのが2012年。社員教育や育成に興味があったのと、入社して22年間ずっと営業をしていたのもあって、ちょっと違うこともしてみようと思ったのがきっかけです。
営業部に所属していたときも、マネージャーとして社内研修なんかで前に立つことがあったし、そもそも喋るのが好き。自分にはコミュニケーション能力があるから、異動してもできるだろうという気持ちがありました。
でも、それは安易な考えだったとすぐに思い知らされます。いくらしゃべるのが好きだといっても、営業と人事は違う仕事。使う筋肉が違うわけですから、当然同じように動けません。
なんの成果も出せず、自分に与えられた目の前の仕事をただ淡々とすごす日々。正直かなり落ち込んでしまいました。そんな僕の姿を見た奥さんが、「会社のメンタル面談を受けてみたら?」といってくれたんです。
実はその時、会社のドアを開けるのもつらいくらいの状態…奥さんの後押しもあって、メンタル面談を受けることにしたんです。
話を聞いてもらったら、自分の気持ちが軽くなったのと同時に、人を支援するというのは、こういうことなんだと自分の中でぼわっと湧いてくるものがありました。
そんな時、キャリアコンサルタントが国家資格になるということで、社内でも人事部の誰かが取得しようということになったんです。迷わず手をあげました。
やっぱり自分は、人と1対1で関わるのが好きだ。異動して苦手な部分もあったけれど、何か自分にもまだやれることがあるんじゃないかと思ったんです。
個別面談からYouTube収録まで、使い勝手がいいONtheUMEDA
ーーその後、キャリアコンサルタントの資格を取得した山田さん。資格を活かし、社内のキャリア面談、キャリア研修などの企画や講師を担当している。ONtheは社員の個別面談で使用されたことがきっかけで、今は月に数回通われているそう。
雰囲気が良くて気に入っています。
今はイベントなどをさせてもらって、社外交流をするサードプレイスとして活用しています。リアルでこういった体験ができるのもONtheのいいところですね。今日だって、ただのおじさんの僕に、インタビューまでしてくれるんですから(笑)
あと、個人で配信しているYouTubeの収録もONtheでしています。といっても、機材は使ってないんですけどね。収録、文字入れ、全部スマホです。僕はどちらかというと機械音痴。でも、スマホだけであれだけのクオリティのYouTubeが作れちゃうんですよ。
普通のおじさんでも簡単に自己表現できる、良い時代になりました。
新しい時代の走り方を実験中
ーー山田さんはTwitterやYouTubeなどのSNSを積極的に発信されている。Twitterに関しては、1日3回はつぶやくようにしているんだとか。それは、今後の人生の走り方を実験するためだと言います。
今は人生100年時代。今までのように、過去の貯金で残りの人生を走れるかっていったら、まず無理ですよね。
そうなると、多くの人が定年を迎える60代って、ひとつのポイントになってくると思うんです。新しい60代の走り方というのを考えないといけない。
じゃあ、自分が60歳になったとき、何を資産として持っていればいいか?と考えたら、僕はSNSだと思ったんです。
例えば、60歳の時に持っているTwitterのフォロワー数やYouTubeの配信数を資産とすれば、その後どんな10年間を送れるか。僕自身で実験してみようと思ったんです。
SNSで発信することで反応してくれる人がいますし、一緒に何かやりましょうといってくださる人もいます。そうやって繋がった人たちと何かを創造することで、残りの人生をまた走れるようにもなります。
今は個人の力で人と繋がり、その人達と「共創」ができる時代です。
ただの普通のおじさんが自分発信することで、その後どんな生き方を送れるのか。ちょっとおこがましいですが、新しい時代のローモデルになればいいかなと思っています。
空宗チャンネル 【50歳からのハイキック】~昭和40年男の葛藤の日々~
https://www.youtube.com/channel/UClgroO5LzOOKSlGmQ3430XA
編集後記
山田さんのプロフィール写真を初めて見た時、「なんかすごい強そう!」そんなことを思いました。
でも、実際にお会いしてみると物腰がやわらかく、とっても優しい「おじさま」でした。
「よく『強そう』といわれますが、普通のおっさんですよ。弱いし、だらしないところもあります。そして特別な人、でもないんですよ。
でも、ちゃんと心が整うように体の手入れはしています。いい意味で体は心の容れ物だと思っていて、体を手入れしておかないと心が入っていかないと考えているんです。
だから毎日のストレッチは欠かさないし、エレベーターやエスカレーターは使わない。日常をちょっと変えるだけで、未来を変えることができると思っています」
優しい人は芯が強いんだ。そう感じた時間でした。
(文:さとう れいこ、写真:今井 剛)