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「100%の成果よりも過程が大切」そんな価値観の仲間と出会いたい。

ONtheに関わる人々、利用する会員様にスポットを当ててその人生に迫るインタビュー特集「穏坐な人々」。今回はフリーランスのマーケターとして活躍する、稲尾輝石さんにスポットを当てた。「フリーランス」という働き方を選んだきっかけや、目指す未来についてお話を伺った。

インタビュアー / さとう れいこ

みらくるWEB代表 / 稲尾 輝石
1996年生まれ。大学在学時からフリーランスとしてアフィリエイトに取り組む。現在は得意のマーケティングを活かし、クライアントからの直依頼や代理店案件まで、様々な事業のマーケティングを加速させている。戦略構築から実行フェーズまで、一気通貫に支援可能。最も得意な分野はSEO。

とにかく仕事ができる人に

「とにかく仕事ができる人になりたかったんです。僕の中で仕事ができる人の基準っていうのが『月に100万円稼ぐ』だった」

稲尾さんの経歴を聞き、まず驚いたのが大学在学時からフリーランスとして活動されていたこと。アフィリエイトに取り組み、月100万円の利益を生み出していたというのだから、さらに驚きだ。

「大学に入って、この4年間で仕事としてできることはないかな、と思って始めたのがアフィリエイトでした。最初から『月に100万円稼ぐ』ことを目標にしましたが、全くのビジネス初心者だったので、結果が出るまでめちゃくちゃ時間がかかりましたね」

そもそも大学に通うことにしたのは、仕事ができる人になりたかったからだと稲尾さんは言う。高卒で就職することも考えたそうだが、とことん上を目指すためには、大学で仕事に結びつくような学びを得たいと思ったそうだ。

サークル活動などはせず、日々アフィリエイトに励む大学生活。目標である利益100万円を達成したのは、開始から1年半が経った頃だった。

「最初に出た利益は、セルフバック(自分が購入することで入る報酬)の300円でした。その後、3,000円、5,000円と徐々に利益が出て、初めて『あ、このやり方でいいんだ』という感覚がつかめたんですよね。そこからどんどん上昇し、ついに月100万円を達成しました」

100万円稼いでも見える景色は変わらなかった

ところで、どうして仕事ができる人の基準が「100万円稼ぐ」だったのだろうか。

「単純にわかりやすい数字だったからです(笑)

それだけ稼げだら、自分の器が大きくなるんじゃないかって思って、それを期待して目指していました。とりあえずアフィリエイトで100万円稼いでみたら、見えるものも変わるんじゃないかと」

単発で達成するのではなく、月100万円の利益を一年間継続させることを自分に課した稲尾さん。そしてそれをしっかり成し遂げる実行力もすごい。

「でも、100万円稼いでも見える景色は特に変わらなかったんです。こんなもんか、って」

私なら100万円の次、300万円、500万円と目指してしまいそうだが、稲尾さんはスパッとそれをやめてしまった。

「お金よりも仕事を楽しめる方が大事。だから得られるものがなかったその後は、何も目指しませんでした」

自分が心からやりたいと思えるサービスを模索

その後も大学4年間はアフィリエイトを続けながら、自分でできるサービスを模索していたそうだ。

「目標は自分のサービスを作ること。でもそのサービスでやりたいことは、今も明確には決まっていないんです。

いくつかやってみたいなと思うものはあるんですが、ふんぎりがつかない。そのサービスを何十年もやりたいかって言われたら、どうなんだろ?ちょっと違うかな、と感じてしまうんですよね。

やるのなら、自分が心からやりたいサービスをしたいので、それがないならすぐにやる必要ないかな、と思っています」


結局、在学中には自分が心からやりたいと思えるサービスに辿り着かなかったため、卒業後は就職せずにフリーランスという道を選択した。就職して、社会人経験を積みながら自分の夢を追うこともできそうな気はするが、稲尾さんにその考えはなかった。

「就職しても、自分のやりたいことに出会えるイメージがなかったんですよね。何十年も続けたいと思えるサービスをしたい。それってもう、自分の感覚が喜ぶようなものなので、自分自身で考えて行動し、探していく必要があると思ったんです」

今の自分を支えるのは大学時代のアフィリエイト

大学卒業後、自身のサービスについて模索しつつ、アフィリエイトで学んだマーケティングのスキルを活かし、マーケターとしてクライアントワークを始めた。

「サービスを作っている人のマインドや行動を見たかったんです。アフィリエイトよりもクライアントワークの方が、サービスを作っている人との距離が近い。その人たちと一緒に仕事をすることで、自分のサービスにたどりつく何かを感じ取れるかもしれないと思ったんです」

自分のサービスを見つけるために始めたクライアントワークだが、マーケティングの仕事は、稲尾さんにとって楽しくて仕方がないそうだ。

「マーケティングって答えがあるようでなくて、研究に近いなって感じているんです。仮説を作って、試して、というのを繰り返して作業している。僕はこれが楽しいって思えるんです。

成果を出す考え方の基本も、大学時代に取り組んだアフィリエイトで身につきました。今の僕のマーケティングの考え方の全てが、アフィリエイト経験で学んだことです」

人とのつながりを求めて

フリーランスのマーケターとして、多くのクライアントを抱える稲尾さん。どのようにONtheを活用しているのだろうか?

「ONtheに来るのは週に1回くらいですね。人とのつながりを作ったり、仕事を一緒にできる人を探したりするために利用しています。僕はどこでも集中できるので、ONtheを作業場所としてはあんまり考えていないかな。もちろん仕事もしますけど」

コワーキングスペースは基本的に作業スペースだと考える人が多いなか、稲尾さんは人とのつながりを求めて利用している。どうして人とのつながりが必要だったのだろうか。

「アフィリエイトは1人でコツコツと作業していればよかったのですが、クライアントワークはそうもいかない。その分野専門の人に仕事をお願いしたいな、と思うことが増えてきたんです。それならどこかで人とのつながりをつくらないといけない。じゃあコワーキングに行ってみようかなと」

人脈を広げるためにビジネスマッチングアプリを使ってみたりもしたが、一回会ってそれっきりになってしまうこともあったそう。コワーキングだったら継続して、その人の様子を見られるかと思い、通うことにしたそうだ。

「一緒に仕事ができるような人を探したり、職種が近い人をONtheのスタッフに紹介してもらったりしています。人とのつながりを作れる空間なんですよね」

良い成果のために、良い過程をつくれるか

これからもっとたくさんの人と交流したいと話す稲尾さん。同じ価値観で理解し合え、一緒に仕事ができる仲間と出会いたい、と。

「一番大切にしているのは、成果を出すために良い過程をつくれたか?ということ。100%確実に成果を出せって言っているのではなく、その過程が大事。その成果を出すために、自分と同じような価値観で動ける人と出会いたい。

例えば、パンをひとつ売るにしても、ただパンを作るだけじゃなく、どのようにして利益が出ているかってとこまで分析してほしい。そうすれば、じゃあどうすればもっと利益が出るんだろう?って、その過程も考えますよね。そこまで考えられる人と一緒に仕事をしたいんです」

学生時代からフリーランスという働き方で成功を収める稲尾さん。しっかりとした一本の芯があり、それに向かって失敗を恐れずにチャレンジするからこそ、手に入るものなのだろう。

まさに若者世代の「憧れ」とも言える生き方をする彼に魅了され、その姿を追う者がこれから増えるだろうと確信した。

編集後記

やさしい笑顔とやわらかい口調で話す稲尾さんだが、マーケティングの話をするときはとても情熱的に仕事人の顔で語ってくれた。

休日は趣味のボルダリングを楽しんでいるそうで、手にできたマメを見せながら「楽しいですよ。今めちゃくちゃハマってます!」と、少年のようにキラキラとした笑顔で話す。

「自分より上手い人の動きを近くで見て、もっと上手くなりたいんですよね」

趣味にも一切、手を抜かない。上昇志向とは、まさに彼のことを言うのだろう。

(文:さとう れいこ、写真:今井 剛)