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実力があっても飾らない、そんな人がかっこいい。

ONtheに関わる人々、利用する会員様にスポットを当ててその人生に迫るインタビュー特集「穏坐な人々」。今回は、「全国賃貸住宅新聞」という不動産業界新聞で記事を書かれている記者・山本悠輔さん。企業の社長やオーナー等、様々な人と対峙している経験豊富な20代は「人」についてどう捉えているのだろうか。

インタビュアー / 宮内 めぐみ

新聞記者 / 山本 悠輔
不動産関連の企業や不動産投資家、オーナーに向け、業界に関する経済状況やインタビューを通じて事業者の声を届ける記者として走り回ること4年目。ONtheでは記事を書くために利用しており、特に地下フロアは没頭できるようだ。

どこかで一歩引いて人を見るドライな人間

どうも末っ子らしい…。偏見ながらもそんな印象を受けたのは「自分の立ち位置を、どこか遠くでもうひとりの自分が見ている」と言ったからだろうか。 尋ねてみれば、やっぱり末っ子。

「僕は一歩引いて状況を見ているタイプで、結構ドライなんですよね。反対に何事も勢いよく動ける人いるじゃないですか。思ったら考えずに行動に走る“猪突猛進タイプ”の人。突っ込んでも事故るだけなのに・・・って思っていたら、あぁ、ほらぁ、やっぱり事故ってもうたやん!て、そんなことを冷静に見ています。」

末っ子話で盛り上がる、末っ子たち。

そして、壁を見つめながらこうも言う。

「だけどそういう人って、ぶつかって失敗した後も、またすぐに進み出すんですよね。すごいなと純粋に思うし、どこかでちょっと羨ましいんです。」

「基本、屈折してるんすよ。」

「人だかりがあったら気になるけど、輪に入って一緒に盛り上がるのはちょっと苦手です。」

ズバズバとした物言いで媚びない彼は、自分のこともまた “こじらせ人生”として話してくれた。

「僕、屈折してますよ。こじらせたのは大学3回生の時でしたねー。就活で同級生が足並み揃えて『よっしゃ、いったるぞ』ってスタート切る時に、指定難病になって突然入院したんです。再発すればまた入院になるので、いわゆる“病気と一生付き合っていく”っていうやつです。無事に新卒採用で就職できたけど、新社会人の環境変化の中で病気のケアをしていかないといけない。22、23歳の自分には到底抱えきれないですよね。」

行き場の失った自分の気持を認めながらも、一呼吸おいて一言。

「だけど、それは絶対理由にしたくないんです。『病気だから許してね』っていうスタンスはすごく嫌。」

と、自分の甘えを許さない信念を口にした。

「自分だけしかわからない理由を伝えたところで、『だから、何なん?』って思いますよね。」

被災地区で経験した“逃げ”

一見、強気な姿勢の印象もある山本さんだが、これまで失敗がなかったわけではない。 西日本豪雨災害の取材で岡山県倉敷市へ赴いたときのことだ。

真夏の腐敗臭、瓦礫の上のランドセルなど、見るも辛い現地だったと語ってくれた。

「被災者の仮住宅についての取材でした。体育館の受付前でおっちゃんに話を伺うやいなや、『なんやお前、あかんとこばっか撮るだけ撮って、さっさと帰るんやろ』と一言。なんとか話を聞いたその後に『中も見るか?』と言ってくれたけど、その時おっちゃんの目は確実に『お前にその覚悟はあるのか』とも語っていた。
僕、そこで帰ったんです。逃げたんですよね。」

「目の前に転がるチャンスから逃げて、一番見なきゃいけないものを見ずに被災地のことを記事に書くって…なんて失礼なんだと思ったんです。しょーもな…俺、って帰り道に後悔しました。」

あの時自分はどうするのが良かったのか、メディアを扱う人間として自分は相応しいのか、その答えは未だ見つかっていないが、この経験は代えがたい財産だと語った。

真の人間性とはどこに現れるのか

このようなシビアな現場に赴いたり、7〜8人の取り巻きの中ひとり大企業の社長にペンを持って立ち向かったりと、人との対峙を重ねる山本さん。
取材中、肩書きがふいに無くなった相手の「素」の瞬間を見ることが好きだと言う。

聞いているこちらが見抜かれていそうだ…

一体、人の何を見ているのだろうか。

「入院中、同じ病棟に40代の女性がいました。その人は交通事故で右足を切断してて、車椅子。右足無くして、40代、これからどうしていこう、って、どう考えても僕はガッツなんて出ない。なのにその人はいつも『おはよー!今日もがんばろねー!』って元気なんですよ。

以前は仕事ができるかどうかの1軸でしか人を見ていなかったところはあったんですが、それを見ていたら、人って何をもって測れるんだろう?と思ったんです。
その方のおかげで、人間性、人としての成熟や成長、そんなところで見るようになりました。」

肩書きや、人脈、実績…自分を大きく見せるキラキラ要素を通り越した先の「ひとりの人間」と向き合っているのだろう。

ひけらかさないって、かっこいい

最後に「山本悠輔」らしさについて改めて聞いてみた。

「自分らしさっていつも一定ではないような気がします。都度その場に合わせて自分らしさを調整するというか。だって、どんな場所でも自分を出しすぎてたら、もう大事故ですやん。だからその場に合わせて自分を変化させるというのが、ある意味自分らしいのかなと思います。
あと、“ひけらかさない人”って憧れます。実力があるのに、表に出さない。隠してるわけではなくて、聞かれたら意識せずにスマートに色々聞いたことは話してくれる、みたいな。」

「この写真ならモテるかな…」

「かっこいいよな〜。憧れるな〜。僕全っ然モテへんのですよ。あー…モテたいなぁ。」

と、天井を見ながら言っていた。
率直さもまた、彼らしい。

編集後記

“能ある鷹は爪を隠す”そんな大人に憧れていると、飾らず率直な話をしてくれた山本さん。
取材の帰り際、「甘いもの、大丈夫ですか?」とさり気なく差し出してきた紙袋には、地元で美味しいと評判のドーナツが適量入っていた。
なんだかんだ言いながらも、粋な気遣いを見せてくれた山本さんは、“かっこいい大人”への階段を登っているところなのだなと、去りゆく後ろ姿を眺めながら思うのでした。

大丈夫、モテますよ。

(文:宮内 めぐみ、写真:今井剛)