ルリアンプランニング株式会社 宮本あつこさん
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ただ、自分の気持ちには素直に。ご縁の流れに乗ってここまできました。

ONtheに関わる人々、利用する会員様にスポットを当ててその人生に迫るインタビュー特集「穏坐な人々」。第3回はONthe UMEDAの会員でありフリーのウェディングプランナーとして奔走する、ルリアンプランニング株式会社 代表の宮本 あつこさん。
人生の晴れ舞台というプレッシャーの大きな現場をフリーランスとして渡り歩く宮本さん。常に一定のトーンで、自然体。そんなキャラクターの裏側には「ただひたすらに、流れに逆らわず」という一貫したスタイルを持っていた。

インタビュアー / 宮内 めぐみ

ルリアンプランニング株式会社 代表 / 宮本 あつこ
大阪府出身。自身のブライダルモデルとしての経験を生かし、500組を越える新郎新婦のトータルコーディネートを担当。その後式場のプランナー経験を経て、2017年にフリーランスのウェディングプランナーとして独立。プランナー選びから始める欧米式のオーダーメイドウェディングを行っている。
ル・リアン(le lien) は、フランス語でご縁や繋がりという意味の言葉。新郎新婦との出逢いはもとより、主役の二人を中心として式に関わる人々のご縁を紡いで式を作り上げたいという想いを込めている。

まだ知られていない「フリープランナー」という仕事

「私そんなにネタになるような話ないんですけど大丈夫ですかね?」

と、謙虚な様子の宮本さん。
フリーランスでオーダーメイドのウェディングプランナーをされている。

通常結婚式を行うとなれば、結婚情報誌を購入して、式場を絞った後にプランを詰めていくことがメジャーだ。結婚情報誌は、時に結婚に踏み切れないパートナーに突きつける紋所としても使われ、なんとなく式場見学へ行ってみて雰囲気を掴んだことでその気になっていくパターンもある。やっぱり結婚式の入口は情報誌からで、式場というハード面を確定させた中で、演出などを進めていく流れになるのだ。

一方で、オーダーメイドウェディングは、まず、プランナーを決める。宮本さん曰く、欧米ではこちらのほうがメジャーで、プランナーが新郎新婦の想いに合わせて演出、装いなど式のすべてを話し合って決めていく。
演出の柔軟さと表現の幅はとても広そうだ。

流れに乗って始めたブライダルスタイリスト

以前より私は彼女と知り合いだ。人生の一大イベントであり失敗の許されない現場、しかも、柔軟な対応と発想力が必要とされそうなウェディングのプロデュースを、フリーランスという立場で向かい合っているのだから、きっと謙虚さの裏側にとても熱くてシビアなものを持っているだろうと、そんな憶測を持ちながらインタビューに入った。

宮本さんの仕事を知るべく経緯をお伺いしてみると、
「ウェディング業界としては13年くらい?あれ?15年だったかな?あまり年数数えてないんですが、多分そのくらいです(笑)」
爆笑でもなく照れ隠しでもない、素直な笑顔とともに、思いの外ざっくりとした答えが返ってきた。実に自然体だ。

モデル時代には、ブライダルモデルも務められており、ウェディング業界との接点はあったという。

ウェディング業界との接点は20代後半だったという。
「実はモデルや司会をしていました。コーディネートやウォーキング、ポージングを学んだのですが、その時のウォーキングの先生でモデルの先輩でもあった方から、『ホテルでブライダルスタイリストの仕事があるよ』と声を掛けていただいて。それで研修を受けた後に、現場のスタイリストメンバーに加えていただきました。この時がウェディング業界に入るきっかけになるかもしれませんね。
なんでこの時やろうと思ったんやろう・・・うーん、流れに乗った感じですかね〜。きっとおもしろそうと思ったんだと思います。」

(あ、あれ?そこは流れに乗っちゃったの?こう、何か夢を描いてた的なものは?)
勝手に宮本さん像を作っておいて大変失礼ながら、思ったより熱くない。もう少し聞いてみる。

「当時は、先々お仕事をするのなら、モデル業のようなオーディションごとにお仕事を獲得するスタイルではなく、日々の活動が経験や経歴になっていくお仕事がいいなぁとなんとなく思い始めていました。ウェディングのお仕事はそれ自体への興味のほか、一つ一つが経験になり、経歴を積めるかな〜と思ったので、それでモデルからブライダルスタイリストへの転身を決めたのだと思います。」
と彼女は結論づけた。

悩み続けた結果「ま、しゃーないやん」

こうして、ちょっとしたきっかけから今の道がスタート。ブライダルスタイリストの後、式場のプランナーとして3年の月日を重ねた後、自身の生活の変化をきっかけに独立をすることになった宮本さん。業界ならではの責任の重さゆえ続けるかどうかは相当悩んだようだ。

「ウェディングの現場はもちろんやりがいがあります。ただ、たくさんの方が携わるがゆえ、どこで何が起きるかわからないんですよね。
式を作り上げる中で、一つひとつの選択に新郎新婦様のこだわりや想いが詰まっていることを知っているので、何かが起きた時は凹む度合いも物凄いんです。だから独立を考えた時に、その精神的な浮き沈みに独立後も耐えられるだろうか・・・と、かなり悩みました。
それまでの人生で様々な経験をしてきた中でもウェディングのお仕事は最も好きだと思えるものだったのですが、一方で、すごくパワーも使うのでついていけるのかなって。」

喜びと落ち込み、ハイリスク・ハイリターンの狭間で揺れる気持ちは、私の想像をはるか越えるギャップなんだろうと思う。

昔はアレコレと悩んだそうだが、今は「どうしたらオーダーメイドウェディングを広められるか」をずっと考えているそうだ。

「そう思ったら、どんどんネガティブな考えが浮かんできてしまうんです。それである日『マイナスなことばかり考えててもしゃーないやん!』ってなったんですよね(笑)」

なんてポジティブな変換だろうか。

「結局、独立に関して具体的な答えって出てないのですが、まぁ考え方次第かなって。良い方に考えたら、そんなに悪い方へとは進まないだろうと思いました。だから独立後、何からしたらいいのかと試行錯誤していますが、日本で知名度が低いオーダーメイドウェディングについてどうしたらいいものか、そこからは前向いて走るしかない状態になりました。」

淡々と、そして穏やかに人生のターニングポイントを語る宮本さんの楽観的で行動派な一面が見え隠れしつつ、やはりここでも彼女は自然体だった。

GOING WITH THE FLOW

こんなにもプレッシャーの重い現場に関わらず、ゆったりと話す宮本さん。まるで大きな凪にぷかぷかと佇む船のようだ。
ますます宮本あつこというキャラクターに興味が沸いた私は、以前から“流れに乗る”ことが多いのかと尋ねてみる。

「うーん、そう言われてみると、昔から『なるようになるかな〜』と考える方かもしれませんね。そういえば、何かの交流会の時にタロットカードを引く機会があって、その時に出た“GOING WITH THE FLOW”

というカードが、ものすごく自分の中でしっくりきたのを覚えています。しばらく携帯の待受にもしてたくらいです。」

と、言いながら一生懸命スマホ検索をして見せてくれた。

「たしか流れに逆らうのではなく、流れに乗りながら進んでいく、というようなアドバイスでした。自分でも『絶対コレがしたい〜!』と突き詰めていく性格ではないと思います。良いのか、悪いのか、わからないですけれど(笑)
だから今この仕事に就いているのも『コレになるぞ!』と意気込んだわけじゃなく、私にご縁があって偶然に始まったことなんだなと思います。」

こちらが話すと、すかさず敬聴の姿勢でいてくれる宮本さん。やさしい。

本当にこの人は肩の力が抜けているなと、ただただ感じた。

性格と仕事がフィットした時が、天職

「 淡々としているからか、昔から周囲に『何考えているかわからんわ〜』とよく言われます(笑)」

自身の性格を分析してもらうと、そう語ってくれた宮本さん。

「多分、思っていることや感情がぱっと出せないところがあるんです。でもそれは逆に、動揺を見せてはいけないプランナーという仕事にはすごく合っている気がします。
今になってこの性格とお仕事とがピタッとはまっている感じがあるので・・・うん、これが天職かなと。
独立によって悩みの種になっていた選択肢がなくなって、やっていることと、元々持っているこの性格とがだんだん寄り添ってフィットした感じがします。」

悩むことも、自分の一部なんだと思う

最後にこんなことを聞いてみた。

”昔の自分に言ってあげたいことはありますか?”

「うーん、言ってあげたいこと・・・何でしょう、難しいですね。」
しばらく考え込んだ後、出てきた答えはこんなこと。

「『悩めることも幸せだよ』ですかね。今は逆に目の前のことをひたすら向き合うという感じで、悩む時間もないと言いますか・・・どちらかと言うと選択肢がなくなった状態です。もちろん今も楽しいのですが、悩んでいた昔の自分のことを思うと、それはそれで選択肢があって幸せだったなぁと思います。悩むことも自分の一部ってことなんだなぁ、って。」

一見、誰もがたどり着く話のようで、そうではない。
これは悩んだ人にしかわからないやつだ、そう思った。

宮本あつこさん
昔はとっさの判断もできない時があったとか。
「以前に比べたら、だいぶ心臓に毛が生えました。」と笑いながら話してくれた。

しなやかに変化できる人

ゆっくりとしたトーンで “GOING WITH THE FLOW”な感じを醸し出している宮本さんだが、決して芯を持たずして流れに乗っているわけではない。
話の端々でご縁を大切に、受け入れる姿勢が感じられる。

先を見据え、まだまだマイナーのフリープランナーという職業や、結婚式をつくりあげる過程が情報誌からだけではないこと、そんな知名度を如何に上げていくかと立ち向かっている宮本さんは、たしかな凛とした空気を纏っていた。
無駄に力を入れず、その時々の流れを掴んで乗ることのできるしなやかさ。
その姿はまさに“穏坐なひと”なのかもしれない。

編集後記

まったくもって失礼ながら、宮本さんとお話をしている間は「本当に、流れるままですね…」というセリフを何度も言ってしまいました。それほど宮本さんの話すお話は、無風の海のような、穏やかな状態。
しかし、お仕事はどう考えてもハプニングが起きやすいし、できれば起きないでいてほしい現場を取り扱っているはず。荒波がないわけがないのです。きっと宮本さんは一切その苦味を感じさせないだけなのだと思います。それは新郎新婦へ絶大な安心感になって伝わっていることでしょう。

もしもこれからウェディングを考える方がいたら、式場ではなく、プランから考える結婚式も選択肢に入れてほしいなと思います。
なぜなら、こんなに素敵なプランナーがいるのだから。

ルリアンプランニング株式会社 WEBサイト

ルリアンプランニング株式会社
https://lelien-planning.com/

(文:宮内 めぐみ、写真:今井剛)