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その人なりの“ええ塩梅”を支える。食事と運動、両面からの健康づくり

インタビュアー / 大野 佳子

健康運動指導士・管理栄養士 / 清水 利江子
管理栄養士として長年、健診や栄養指導に携わり、約3万人の方と関わってきた。健康表現体操との出会いを経て、運動指導にも広く携わる。現在は個人事業主として、食事と運動の両面から健康づくりに取り組んでいる。

栄養士から始まった、健康づくりへの道

これまでのキャリアについて教えてください

高校を卒業後、栄養士を目指して、大阪市立環境科学研究所附設栄養専門学校に進学しました。

内心では、大学で人間工学を学びたいと思っていました。しかし、設計士の父は「人間工学は女性の少ない分野だし、資格が取れるわけでもない。大学に4年間も進学させられない」と反対しました。進学するなら「3年以内に資格が取れる職業」が条件でした。そこで候補にあがったのが、図書館司書、秘書、看護師、栄養士でした。

その中から、栄養士を選んだきっかけが高校時代の水泳部にあります。

いつも泳ぐたびに足がつってしまう後輩がいました。その時の顧問の先生の「もしかして食事と関係があるんじゃないか」という言葉から、栄養の分野に関心を持つようになりました。

そうして栄養士養成の専門学校に進みましたが、入学式で先生から「栄養士の資格だけでは就職先がありません。管理栄養士を取ってください」と言われてしまいました。それでもすぐに気持ちを切り替え、管理栄養士を目指しました。

専門学校を卒業後は、どのような道に進まれたのでしょうか?

惣菜製造の食品会社に就職しました。働きながら管理栄養士の国家試験の勉強を続けるのは、思った以上に大変でした。帰宅後は深夜3時まで机に向かい、朝6時に起きて出勤する。そんな日々を重ねて、無事に資格を取得できました。

そんな矢先、阪神・淡路大震災の影響で勤め先の神戸工場が閉鎖になりました。横浜工場への転勤を打診されましたが、これを機に退職を選びました。

その後、管理栄養士として、保健センターや栄養クリニックなどで経験を重ねたのち、公益財団法人兵庫県予防医学協会へ転職しました。

転職先では、健診施設「健康ライフプラザ診療所」の立ち上げから携わり、長年にわたって栄養指導や健康相談を実施しました。健康診断結果の確認や内容説明、特定保健指導を行うなかで、これまでに約3万人の方と関わってきました。

「歌って笑って健康体操」との出会い

職場では、栄養指導のほか、さまざまな講座の運営に携わりました。そうしたなかで、私の関心は次第に運動指導にも向いていきました。実は運動指導は、高校卒業後の進路を考えた際に、まず候補にあがっていましたが、断念した経緯があります。

健康運動指導士の資格を取得したのは、採用から2年目のことでした。施設側でも資格を持つ人材が必要となり、取得させてもらえました。もともと私自身が欲しかった資格だったので、「棚ぼた」です。

そうして、いざ運動講座を担当することになりましたが、運動指導は未経験。手元にあるテキストを頼りに試行錯誤を重ねていました。そんな私を見ていた上司から「今度、『健康表現体操指導員養成講座』が開講されるから、参加してみたら?」と声をかけてもらったのが、健康表現体操との出会いでした。

健康表現体操とは、どのようなものなのでしょうか?

なじみのある曲を歌いながら、ストレッチや関節運動などを行う体操です。浜松では約3万人の愛好家がいて、毎年コンテストが開催されるほど親しまれています。

ただ、「健康表現体操」という名前には少しかたい印象があります。体操への呼びかけをしても、「表現なんてできひんわ」とおっしゃる方もいました。そこで、どんな体操なのかが伝わるように「歌って笑って健康体操」という別名を付けたんです。

それ以降、職場でも人気の講座となり、50代から最高齢では92歳の方まで参加されました。

また、「いきいきライフセミナー」(主催:兵庫県予防医学協会、神戸新聞社)では、平成18年から29年まで毎年、参加者のみなさまと一緒に健康表現体操を行う機会にも恵まれました。

仕事をするうえで大切にしていることはありますか?

実は私、運動すること自体があまり得意ではありません。「運動音痴な先生」ですね。

そんな私でもスムーズに上達できる経験をしたことがあります。それが小学生のころに通っていた水泳教室でのことです。先輩の泳ぐフォームを見てまねるうちに、バタフライが泳げるようになりました。私はその経験から、「よく観察して、体の使い方を変えれば上達できる」ということを、小学生ながらに感じました。

運動が苦手な私だからこそ、できない人の気持ちも、どこでつまずいているのかもよくわかります。そして、私の得意技は「言語化」です。どう体を動かせばいいのかを、相手と同じ目線に立って、できるだけわかりやすく伝える。それが、私なりの運動指導なのだと思っています。

それに、人ってやっぱり楽しいことをしたいですよね。だから、無理をして頑張るよりも、その人が「楽しい」と思いながら続けられることを大切にしています。

「受け身ではなく、自分で決める」独立し、地域に健康を届ける

現在の活動についてお聞かせください。

これまでを振り返ると、なぜか「4」のつく年に大きな変化がありました。

初めて勤めた会社の退職を決めた24歳、マンションを購入した34歳、結婚した44歳。そして54歳を迎えるとき、「受け身ではなく、自分で決めよう」と思い、長く勤めた会社を辞める決断をしました。

現在は個人事業主として、健康づくりの活動に取り組んでいます。

「歌って笑って健康体操」を主軸にして、「スクエアステップ(歩く脳トレ)」「ひめトレ(骨盤底筋群のトレーニング)」などの運動メニューや「健康診断の賢い受け方」といった講話を行っています。

活動場所のひとつに、高齢者の居場所づくりに取り組むNPO法人「希望の居場所」があります。そこで私はデュアルタスク運動として「スクエアステップ」と「歌って笑って健康体操」を月1回担当しています。

ここで開かれる「おとな食堂」では、たんぱく質がしっかり摂れるお弁当が提供されるなど、栄養面にも工夫が凝らされています。私も利用者のみなさんに交じって、食事とおしゃべりを楽しんでいます。

また、就労支援施設「ワークフレンズみくら作業所」でも、歌いながらの運動として健康表現体操を実施しています。健康づくりを通じて、地域での関わりを広げています。

ONtheは「オアシス」であり、「起爆剤」でもある場所

どのようにONthe を利用されていますか?

普段はフロアを利用することが多いです。前職を退職して開業準備をしていたころにも、よく足を運びました。そのときは事業の構想を練る一方で、気分転換に編み物をすることもありました。

実は、編み物は母ゆずりの趣味で、小学3年生のころからずっと続けています。私にとっては、手を動かしながら気持ちを整える「積極的休養」のようなものです。

また、「ONthe BAR ~夏夜の集い2026~」では、「手近なマインドフルネス」として、かぎ針編みワークショップを行いました。ONthe BOXでハンドメイド作品やワークショップの案内を展示していますので、見ていただけるとうれしいです。

ほかにも、「自営業者のための賢いけんしんの受け方」というテーマでONthe caféのマスターも務めました。

私にとってONtheは、まさにサードプレイスです。家にいるより集中できて、「今日はONtheに行こう」と決めると、「それまでに家のことを済ませておこう」と自然とスイッチが入ります。

ほっとできる「オアシス」でありながら、「起爆剤」のような存在ですね。

今後もONthe caféなどのイベントを通じて、食事や運動のよもやま話を、みなさんと楽しくお話しできたらと思っています。

「ONthe BAR ~夏夜の集い2026~」での、かぎ針編みワークショップの様子

“ええ塩梅”で過ごせるお手伝いをこれからも

これからチャレンジしたいことをお聞かせください

世代を超えて、たくさんの方に「歌って笑って健康体操」を届けていきたいです。

これまでの活動を通じて感じるのは、健康には食事も運動も、どちらも大切だということです。

私は高校を卒業してすぐに運動の道へ進んだわけではありません。管理栄養士や健康運動指導士の経験を重ねるなかで、健康表現体操と出会い、ぐるーっと遠回りをして、現在の活動に至りました。

でも、その遠回りがあったからこそ、食事と運動の両面から、健康づくりを支えられるようになりました。

こうした経験を活かして、異なる分野をつなぐ役割も担っていけたらと思っています。

そして、プライベートでも新しいことを始めたいと思っています。最近、25年間続けてきたバレエからいったん離れたので、次は何を習おうかなと考えているところです。

清水さんにとって、「健康である」とはどのような状態だと思いますか?

世界保健機関(WHO)憲章では、「健康とは、肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない」と定義されています。

それを私なりに関西弁で言い換えると、「その人にとっての“ええ塩梅(あんばい)”」だと考えています。

例えば、体に少し調子の悪いところがあったとしても、心が元気で、活力を持って過ごせている。それは“ええ塩梅”だと思います。

健診結果に気になるところがあったとしても、自分のやりたいことを楽しめている。それも、その人にとっての健康のかたちです。

みなさんが、それぞれの“ええ塩梅”で過ごしていけるように。そのお手伝いを、これからも続けていけたらと思っています。

編集後記

清水さんの楽しい話術に引き込まれ、笑いが尽きないインタビューのひとときでした。

取材のなかでは、ぎっくり腰についての豆知識も教えていただきました。意外にも、歯磨き中の前かがみになる動作をきっかけに起こることが多いそうです。口をゆすぐときには、足の付け根からしっかり体を倒すことがポイントなのだとか。

つい腰だけを曲げて横着してしまうので、気を付けたいと思います。

清水利江子さん

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(文:大野 佳子、写真:中山 雄治)