穏坐な人々_東良さん
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伴走型の経営支援で、日本の中小企業支援のあり方をアップデートする

ONtheに関わる人々、利用する会員様にスポットを当ててその人生に迫るインタビュー特集「穏坐な人々」。
今回お話を伺ったのは、中小企業支援を取り扱う『株式会社創生アドバイザリー』代表取締役、東良亮さんです。苦労された勤め人時代の経験を元に独立された経緯と、「中小企業支援のあり方を変えたい」という熱量の高い想いについて、詳しくお話を伺いました。

インタビュアー / 知院 ゆじ

株式会社創生アドバイザリー 代表取締役 / 東良 亮
1986 年兵庫県宝塚市生まれ。 同志社大学経済学部卒業後、飲食業と保険代理店での勤務を経て、2015 年に株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア株式会社)へ転職。採用コンサルティングとヘッドハンティングに携わり、トップセールスとして複数回表彰を受ける。2021年2月に株式会社創生アドバイザリーを創業、主に中小企業やベンチャー・スタートアップの経営支援を行う。

中小企業支援に精力的に携わる

「私たちの仕事で、中小企業支援のあり方を変えたいんです」

目の前に座り、熱っぽく話す東良さん。

「よく童顔だと言われるのですが、得した経験はあまりないんですよね」

かなり精力的に動かれているのに、くたびれた様子はまったくなく、若々しいという表現が一番しっくりくる。

『さあ、徒党を組もう』

代表を務める株式会社創生アドバイザリーでは、関西を中心として中小企業やスタートアップ企業の支援を行っている。

「営業支援と採用支援を軸に、お客さまの困りごとをヒアリングして、現場に入って実務を支援するところまで行っています。具体的には、新規事業の立ち上げや販路開拓などを数多く手掛けています」

東良さんのお客さまには、存続自体が危ぶまれる企業も少なからずある。

「取引先からの理不尽な扱いや借入金の負担で、客観的に見て倒産寸前だったという企業もお客さまの中にいらっしゃいます。そこに私たちが入って、事業計画の再設計や組織再編を行ったり、営業・採用計画の策定から実行まで携わったりと、経営者の不安要素をできるだけ取り除く。そういった泥臭い、本当に困っている企業の支援も全力で取り組んでいます」

創生アドバイザリーの特徴として、各分野の専門家とチームを組んで支援にあたるところが挙げられる。

「私はこれまで営業と組織管理の現場で育ってきて自信を持っているので、営業や組織統括に関するテーマを担当する。同じく、採用と会計の分野はそれぞれ専門の担当者を置いて、お客さまの課題に合わせて最適な形でチーム編成をして進めています。お客さまからいただいた料金以上の成果を出さないと私たちが入る意味がないので、綿密に事業計画を立てて取り組んでいます」

経営者と支援者が一丸となって、全力で事業課題に取り組む。ここが、創生アドバイザリーが掲げる『徒党を組む』の本質的な部分となっている。

現在の仕事に直結するスキルを、命懸けで身につける

『社長の子ども』であったという事実が、東良さんのバックグラウンドにある。

「生まれも育ちも兵庫県の宝塚で、経営者の父と専業主婦の母のもとで育ちました。浅黒い肌をして、ごつい車を乗り回すような、結構派手な見た目の父親で。そういう姿しか見ていない友人たちからは親が社長なのを羨ましがられたのですが、機嫌良く話していた父親が1本の電話で豹変する姿を間近で見ていて『大人ってしんどいんだな、会社をやるって大変なんだな』と感じていました」

同志社大学経済学部を卒業した2008年、大手飲食企業に就職する。

「卒業後はお好み焼きの職人になろうと思っていたのですが、会社勤めも経験しておいた方が良いと言われて、それもそうだなと。スーツを着る仕事は嫌だったので、飲食関係のできるだけ大きい企業へ行こうと考えて入社しました」

入社した年の夏、リーマンショックで一気に不景気に。飲食業も大打撃を受ける。

「繁華街にある店舗を担当していたのですが、一気に人通りが激減して客席が埋まらなくなりました。朝5時にお店を閉めた後、7時半ぐらいに起きて、宴会のパンフレットを持ってオフィスビルを上から下まで飛び込み営業するなど、地道な活動で売上をつくっていた時期もありましたね」

店舗の管理者として、数値管理も非常に厳しく追及された。

「数値管理をミスすると店舗の経常利益にダイレクトに影響が出るため、上司からはかなり厳しく詰められましたね。店舗の各種経営指標を見て数値の動向を読むというのを、実地で叩き込まれて鍛えられました。現在の仕事でも、その頃の経験が活きていると感じます」

文字通り身を削って飲食業で働いているうちに、あれだけ嫌がっていたスーツを着る仕事がしたくなり、オーナー経営者がいる会社にしようと保険代理店に転職する。

「労働環境としてはかなりタフな会社でしたが、それでも前職よりは改善されました。その会社では、通常は3年ぐらい契約社員となるのですが、1年弱で社員に抜擢されて店長に昇格したんです」

そこでは思うような結果を出せずに降格してしまうが、降格後の頑張りを社長から認められ、法人事業部の立ち上げメンバーに再抜擢される。

「仕事にやりがいは感じていたのですが、結婚を機に再転職しようとインテリジェンス(現パーソルキャリア)に相談に行ったんです。そこで『これまでキャリアでそんなに苦労されているのなら、それを仕事に活かしてみてはどうでしょう?』と言われて、あらためてインテリジェンスを受けに行き入社しました。これが29歳の時ですね」

ここまですべて20代での出来事だという、そのジェットコースターぶりにあらためて驚嘆させられる。

企業によって課題感がまるで違うことに衝撃を受ける

インテリジェンスでは、入社後4年間は関西の法人の採用支援を担当。その後、エグゼクティブエージェントというヘッドハンティング部隊へ異動する。

「20代で積み上げてきた経験を活かしてかなり実績は出せたので、社内でも名前が通るくらいにはなりました。インテリジェンスでは、さまざまな企業さまと仕事を通して出会う経験をさせてもらえたのが良かったなと思います」

インテリジェンスで順調にキャリアを伸ばしていた東良さん。独立しようと思ったのは、ふとしたきっかけからだという。

「会社員時代に、副業で兵庫県多可郡の商工会で経営指導をやらせていただいたのが独立のきっかけです。インテリジェンスで出会う企業は、人材派遣を利用できるので、基本的に資金繰りには余裕があるんです。一方、多可郡で出会った企業は家族経営の中小企業が多く、コロナ禍や地域のしがらみの中で大きな借金を抱えて、夜も眠れないほど苦しんでいる方がたくさんいるのを見て衝撃を受けました。多可郡以外の地方を見ても、地域の一部のコンサルタントがお金をもらってもろくなアドバイスもせずにお茶を飲んで帰るだけ、みたいな実態を目の当たりにすることもありました。それを見て、過去に苦労を重ねていた父親の姿が重なってしまって。これではあかんやろ、自分が変えてやろうと思って、3ヶ月後に起業したのが創生アドバイザリーです」

その時、東良さんは35歳。その場の勢いのような形で、中小企業支援の世界に飛び込んだ。創生アドバイザリーのサイトにある『「このままでは駄目だ」そう感じた今こそ、行動を起こすべき時』の言葉を見事に体現している。

良い塩梅の喧騒がONtheにはある

現在、ONtheを週2回程度利用しているという。

「起業して法人化する前、2021年ごろから利用しているので、もう4年くらいになります。独立するにあたってオフィスを探していたところ、たまたまONtheを知って利用を始めました。現在は法人の住所登録もONtheにしています」

利用目的はオンラインミーティングや来客対応などが多いそうだ。

「採用面接や来客対応で来ていただくにも便利ですし、お洒落で使いやすいと感じています。雨に濡れずに来られるのもありがたいですね。周囲が静かすぎないのも自分には合っていて、良い塩梅で仕事に集中できています。当社は全員がフルリモート勤務なので、ミーティングは基本的にオンラインなのですが、普通に話す程度なら嫌な顔をされることはありません」

中小企業支援のあり方と合わせて、働き方も変えていく

起業した当初は、社会に対する怒りの感情が先に立っていたが、現在では少し考え方が変わってきたそうだ。

「当然といえば当然なのですが、社会には悪い人ばかりではないことに気付いて、少し冷静になりました。コンサル業は色眼鏡で見られがちではあるのですが、こういう仕事に興味を持ってくれる経営者の方を増やして、私たちを全面的に頼っていただきたいと思っています。ただ、お客さまから見れば成果が出ないものにお金を払いたくないし、私たちも成果を出さないと意味がない。お客さまが現状を打破するために戦っている状況で捻出いただく大切な投資に対して、目に見える実績を上げてしっかりとお返ししたいですね」

今後10年で、売上15億円、従業員100名を目指すと東良さんは語る。

「近畿地方以西の中小企業支援マーケットの市場規模を試算してみて、おおよそ150億円の規模だと想定しました。そのうちの10%シェアを取ることで、 『伴走支援型コンサルティング』という手法の認知が広がると考えています。当社では『中小企業支援のあり方を変える』というミッションを掲げています。これは、他のコンサル企業を出し抜くというよりも、私たちのような実務をやるコンサルが増えれば資金不足の中小企業も助かるはずだ、という考え方に基づくものです。そして、売上15億を実現するためには、従業員100名体制で挑まないといけない。とはいえ、人材の採用と育成に気を配る必要がありますので、焦らず慎重に進めていきたいですね」

採用の部分は、創生アドバイザリーとして今後力を入れていく部門でもあるという。

「初めて沖縄に行った際、銀行の方から『日本で1番年収が低く、日本で1番離婚率が高く、日本で6番目に自殺率が高い』という話を聞いたんです。沖縄に対してキラキラしたイメージしか持っていなかったので、厳しい現実を知り愕然としました。そこで、フルリモートで働ける環境なら、沖縄でも採用を増やせるのではと考えました。ゆくゆくは、完全在宅勤務の営業支援チーム・採用支援チームを、シングルマザーも含めたお母さんを雇用して立ち上げたいと計画しています。子育てや低賃金で働く場所が限られているだけで、ポテンシャルの高い方はたくさんいらっしゃいます。そこに、当社が蓄積してきたノウハウを足せば、高品質な支援が可能となるはず。私たちが採用活動を行うことで、沖縄が抱える社会問題を解決する一助になるのではと思っています」

売上15億円・従業員100名は、もう手が届くところにある。

編集後記

東良さんは、ご家庭では8歳と1歳のお子さんの父親でもあります。

「休みの日でも、もっぱら仕事のことばかり考えています。帰宅前に駅ビルなどにある立ち飲み屋に寄って一杯飲んで帰るのが、良い息抜きになっていますね。家に帰れば、妻と子どもたちの時間を大切にしたいので」

何ごとにも本気で取り組み、本当に充実した毎日を過ごされているのだなと感じました。爪の垢でも煎じて飲みたいです。

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(文:知院 ゆじ、写真:中山 雄治)