働きたいと思うすべての人が、気持ち良く働ける社会を目指して
ONtheに関わる人々、利用する会員様にスポットを当ててその人生に迫るインタビュー特集「穏坐な人々」。今回お話を伺ったのは、社会保険労務士の實島 悠(みしま はるか)さんです。社労士を目指したきっかけや現在の働き方について、詳しくお伺いしました。
インタビュアー / 鶴野 ふみ
- はるか未来社労士オフィス 代表 社会保険労務士 / 實島 悠(みしま はるか)
- 大学卒業後、人材業界を中心にさまざまな営業職を経験。働きたい人が気持ちよく働ける社会を目指し、社会保険労務士の資格を取得。2023年に「はるか未来社労士オフィス」を開業。現在は社労士と人材紹介会社の正社員のパラレルワーカー。
人とのつながりを大切にしたい
ーー現在、社会保険労務士として活躍する實島さん。実は、實島さんは、社労士ではない、もうひとつの顔があります。
社労士として開業していますが、会社員としても勤務しています。いわゆるパラレルワーカーですね。
会社員としては、障害のある方向けの就転職支援を行う人材サービス会社に勤務しています。現在は、弊社のサービスに興味を持って下さるお客様との接点づくりなどを担う、いわゆるインサイドセールスのような部署に所属しています。
その中でも、私はセミナーの企画・運営、障害者雇用に関するホワイトペーパー(お役立ち資料)の制作などの担当です。
社労士としては、2023年に事務所を開業しました。現在は「障害年金請求の代行」が主な業務。障害年金の請求に関するアドバイスや、必要書類の作成、年金事務所との折衝などの代行を行っています。
平日の4日間は会社員、その残り平日1日と土曜日に社労士として働いています。なかなかのハードワークですが、どちらの仕事にもやりがいを感じています。
ーー今の仕事はどちらも、障害のある方の働き方や生き方をサポートするもの。でも、それは實島さんが意図したものではないそうです。そもそも、障害年金の請求代行が社労士の独占業務ということすら、知らなかったとか。では、社労士を目指したきっかけは何でしょうか?
話しやすい雰囲気があるのか、昔からよく人から相談されることが多かったんです。大きなことは出来ないけれど、相談してくれた人の気持ちが少しでも楽になったり、表情が明るくなったりすることが、わたしにとっても大きな喜びでした。
だから学生の時は、臨床心理士を目指してたんですよ。ちょっと勉強がハード過ぎて挫折しちゃったんですけど…(笑)。
「いざ就職活動!」となったときに、やはり人とのつながりを感じられる仕事に就きたくて。飲食店向けの販促物を扱う会社の営業職がわたしの社会人としてのスタートです。
社労士を目指したきっかけは、前職の人材サービス会社で働いていたときのことです。当時は求人サイトの営業を担当していたんですが、営業先で「うちにこんな従業員がいて…」みたいな、労務に関するご相談を受けるようになったんです。
ただ、せっかくご相談いただいても、知識も資格もないので、何もできない。そこで、こういうときに何か役に立つ資格はないのかな?と探して見つけたのが「社会保険労務士」でした。
働きたい人が働ける社会を
ーー現在、正社員として勤務する会社は、障害のある方向けの就転職支援を行う人材サービス会社です。この会社との出会いはどのようなものだったでしょうか?
実は、障害のある方について、そんなに強い興味があったわけではなかったんです。ただ、身近なところに発達障害や精神障害の方などがいたので、全く興味がなかったという訳でもありません。
前職の人材サービス会社での仕事を通じて「働きたいのに働けない人」がたくさん存在していることに気がついたんです。そして、「なぜ働きたいと言っている人が、当たり前に働けないのだろう」と疑問に思うようになりました。
次第に、その部分に関わる仕事に就きたいと思うようになり、より深く「働きたい人」と関わることのできる人材紹介の会社を転職先として選びました。
「働きたい人が働くためのサポート」と考えると、障害の有無ってあまり関係ないように感じます。だから、「障害のある方を支援する仕事に携わりたい」といって今の会社を選んだ訳ではないんですよ。実は、今の会社は、ほかの方から「きっと合うと思うよ」と薦められた会社です。そのアドバイスは的確で、今の自分に合った職場だと実感しています。
社労士はあらゆる人に、未来へ目を向ける「きっかけ」を与えられる資格
ーー会社でも社労士の資格を活かしつつ仕事をされている實島さん。資格を習得したときは、このような相乗効果は予想してなかったとか。では、社労士の資格は實島さんにとってどのような存在なのでしょうか?
社労士の勉強は正直、かなりきつかったです。でも、そんな中、資格を取得して本当に良かったと思っています。もちろん、今の仕事に役立っていることもですが、何より、自分に自信を持てるようになりました。学生時代に臨床心理士を諦めた経験があるので、そんな自分でもできるやん!って(笑)。
また、営業経験しかないわたしにとって、将来の選択肢を広げてくれた資格でもあります。「働く」ということに対する、大きな安心感につながりました。
ーーさらに、依頼の方の人生を変えることができる資格であるとも感じています。
障害年金に関する相談は、ハードルが高く、なかなかはじめの一歩を踏み出せずに悩んでいる方が多いように感じます。そのため、思い切って相談に来られる際は、不安な表情で「これからの生活をどうしよう」と深刻に考えている方もいらっしゃいます。
しかし、年金を無事に受け取れるようになったあとの面談では、まるで人が変わったように顔つきが晴れやか!「これからの生活をどうしていくのか考える余裕ができました」と笑顔を見せてくださる方も多いです。
その変化を見るたびに、この仕事の意義を改めて実感します。少しでも力になれたことがとても嬉しく、社労士としてやりがいを感じる瞬間ですね。
社労士は「今、大変な状況にある人に、ちょっと先の明るい未来を見つけるきっかけをくれる資格」だと思います。5年もかかりましたが、取得して本当によかったです。
様々な困難も持ち前のフットワークの軽さで乗り越える
ーー資格取得後、社労士としても順調に経験を積む實島さんですが、困難に直面することもあったそうです。
「社労士」といっても、資格を取っただけで、実務経験がない状態からのスタート。職場にはほかに社労士もおらず、ロールモデルとなるような方もいませんでした。
そもそも私自身、営業の経験しかありません。労務管理、給与計算、社会保険の手続き…どれも未経験。
わからないことがあっても、質問できる相手もいない状況だったので、本当に困りましたね。ノウハウもない中で手探りの日々でした。
そこで、年金事務所によく足を運び、職員の方と仲良くなって気軽に質問できる関係を築いたり、大阪社労士会の役員として活動することで、他の先生方との接点を作ったりしました。
ーー實島さんの行動力は社労士としてのキャリアを築く原動力。また、何事にも正直に、等身大で向き合う姿勢も實島さんの魅力です。障害年金の請求を依頼された方の口コミにも「人柄で決めた」というコメントが多くみられます。
ご依頼いただく際は、事前に、一人で行う場合の障害年金の請求方法もきちんとお伝えしています。ほかの社労士の先生には「依頼してもらえなくなるかも知れないのに、どうしてそんなことを?」って驚かれることもあります。でもわたしは、大きなことを言うのは苦手な性分で…。
障害年金の請求は、社労士でなく、ご本人でもできますし、委任状があればご家族の方でも可能です。また、わたしにご依頼いただいた場合も、もちろん最善は尽くしますが、ときには良い結果ではないこともあります。だからこそ、依頼をご検討いただく際には、自分の知っていることをしっかりお伝えし、納得の上で、選んでいただきたいと思っています。
ONtheはわたしの秘密基地
ーー實島さんにとって、ONtheはどのような存在なのでしょうか?
実は、過去にONtheの系列のコワーキングでアルバイトをしていたことがあります。だから、ONtheのことはオープン当初から知っていました。ヘルプスタッフとして勤務したこともありますよ。
なので、ここの雰囲気の良さは重々承知。「いつかこんなところで仕事ができたら素敵だな」と思っていたある意味、憧れの場所ですね。
今は社労士事務所の住所として利用させていただいているほか、時間があるときには仕事や、依頼者の方とお話しさせていただくときなどにも使わせてもらっています。
ONtheはわたしにとって、秘密基地みたいな場所ですね。家には家族が、会社には仲間がいるけど、ここはわたしだけ。ちょっとワクワクする未来を自由に思い描ける特別な場所です。
多様な価値観を認め合って働く環境を
ーーこれから實島さんが描く未来はどんなものなのでしょうか?
今後の目標は、まずは障害年金の請求業務でさらに経験を積み、この分野で一人前の社労士になること。そこからは、もっと社労士としての幅を広げたいと思っています。「働く」ことは生きていく上で欠かせない要素です。
障害の有無に関わらず、価値観や背景が異なる人たちが一緒に働き、支え合うことがこれからますます当たり前になっていくはず。そんななか、すべての人が働きやすいと感じる環境を作る手伝いができれば、と思っています。
編集後記
實島さんが「人から相談されることが多い」というのも納得の、親しみやすく温かい雰囲気が印象的でした。相談者から「人柄で決めた」と言われる理由がよくわかります。取材中も、目を見て誠実にお話してくださり、その一つひとつの言葉に信頼感がにじみ出ていました。
パラレルワークで忙しい日々を送る中でも、ピラティスやご友人との時間を大切にされているという實島さん。仕事にもプライベートにもエネルギッシュな姿がまぶしかったです。これからも、その行動力と誠実さで多くの人を支えていかれる姿が目に浮かびます。
そんな實島さんの「はるか未来社労士オフィス」の詳細は、公式サイトをご覧ください。