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「誰かの力になりたい」という気持ちから弁護士へ

ONtheに関わる人々、利用する会員様にスポットを当ててその人生に迫るインタビュー特集「穏坐な人々」。今回お話を伺ったのは、弁護士の松田 昌明さん。松田さんが弁護士を目指したきっかけや、弁護士として心がけていることについて、詳しくお伺いしました。

インタビュアー / 鶴野 ふみ

弁護士 / 松田 昌明
「誰かの力になりたい」という想いから弁護士を目指す。京都大学法学部・同志社大学法科大学院を修了し、2009年から弁護士、2020年から弁理士登録。六甲法律事務所パートナー弁護士(兵庫県弁護士会所属)。

建前じゃない人間の本音に触れたい

ーー現在、弁護士として活躍する松田さん。弁護士を志したのは高校生のころでした。

漠然と「誰かの役に立ちたい」という気持ちは持っていました。ちょうど、当時流行っていたアニメのセリフに「優しいだけじゃ人は救えないんだ!人の命を救いたきゃそれなりの知識と医術を身につけな!腕がなけりゃ誰一人救えないんだよ!!」というのがあって。
「想いだけでは人の役には立てない」と、弁護士を目指すようになりました。

数ある仕事の中で弁護士を選んだのは、人間の「本当の姿」が見られるから。建前ではない、人間の本音の部分に興味があるんです。きれいなことばかりではなく、ドロドロした醜い部分も含めた、人間としての本質的な部分に関わりたい。

小学生のころから、いわゆる「サスペンス劇場」とか推理小説とかが好きだったのも関係あるかもしれませんね。

ーー夢をかなえた松田さんは現在、弁護士として様々な分野の案件を担当されています。

神戸元町にある六甲法律事務所でパートナー弁護士として働いています。いわゆるマチ弁(地域に根差した弁護士)なので、企業の案件から個人の方の案件まで、取り扱う分野はかなり幅広いです。

具体的には、企業の場合は、解雇やハラスメントなどの労務的な問題や、さまざまなトラブルの相談などが主。最近では、ネットのレビューの書き込みや、許可なしにアップされた動画の相談などもときどきありますよ。

個人の場合は、相続や不動産、交通事故の問題などが特に多く扱っている案件です。

どんなケースでも法律のプロとして、依頼者の方の気持ちに寄り添いながら、最善の解決策を見つけるべく励んでいます。

ーー松田さんには、そのほかにもライフワークとして、積極的に取り組まれているものがあるそうです。

仕事に直結するわけではないのですが、子どもたちへの法教育にも積極的に取り組んでいます。法教育とは子どもたちに法律や司法制度を通じて法的なものの見方や考え方について伝えること。

実際に学校へ足を運んでセミナーやワークショップを行っています。

もちろん「弁護士」という職業やその魅力を知ってもらいたい、という気持ちもありますが、論理的な思考や多角的な視点を身につけてほしい、というのが法教育に取り組む理由ですね。

例えば、ワークショップでは、ルール作りや模擬裁判などを行います。そこで発生した問題を解決していく過程で、広い視野を持って、何が必要かを考えて欲しいんです。物事にはいろいろな側面がある、異なる意見を尊重する、全員が納得するには何が必要か、など論理的な思考を身につけるきっかけになれば、と思っています。

気軽に相談できる環境を

ーー「弁護士は敷居が高い」と感じている人は少なくありません。松田さんはその敷居を下げるべく「弁護士らしくない弁護士」でありたいと言います。

どんなことでも気軽に相談できるような弁護士でありたいと思っています。一般の方が弁護士に相談しようとする時って、何かのトラブルに巻き込まれたり、人生で大きな問題に直面したり、というケースが多いはず。そんなときに、気負わず相談していただける、良い意味で「弁護士らしくない弁護士」でいたいな、と。

全く知らないところへ飛び込むのは、誰だって不安。その方の人生で初めての弁護士になる可能性だってあります。だから、弁護士としてSNSやブログでの発信に力を入れています。このような情報発信を、安心材料のひとつにしてほしいですね。

YouTubeも配信してるんですよ。法律の勉強をされている方向けの動画や、事業者やクリエーター向けの著作権についての解説動画、相続についての動画など、いろいろな動画をアップしています。動画の内容を参考にしてもらうのはもちろん、普段の雰囲気や話し方も感じ取っていただければ、と思っています。

実は、ホームページは全部自作なんです。幸いなことに最近はホームページからご依頼いただくことも。「ホームページを見て」と言われる方が増えてきたのはうれしいですね。

「先生に頼んで良かった」が一番の喜び

ーー松田さんが弁護士として大切にしているものは何でしょうか?

やはり、依頼人の方との信頼関係です。当たり前のことですが、弁護士は依頼人の味方。依頼人が正当な利益を最大限得ることができるよう、尽力します。

ただ、法律的に依頼人のすべての要望が通らないこともよくあること。そのような場合、できるかぎり丁寧に説明はするのですが、お互いの認識にちょっとした齟齬があり、そこから信頼関係が崩れてしまうこともあります。

そもそも弁護士の仕事は人の紛争の間に入って解決することが多いので、相手方からきつく言われることは日常茶飯事。そこは割り切って仕事できるんですが、依頼人との信頼関係が崩れてしまうと非常に辛いですね。

依頼人の要望をすべて通そうとすることが、最善の解決方法になるとは限らないのが、むずかしい。ときには、ある程度で折り合いを付けて、早めに解決し、次へ進むことがその人の人生においても良いんじゃないか、と思うこともあります。そんな場合は、依頼人の方の希望も聞きながら少しずつ説得というか、いろいろお話しながら、落としどころを一緒に見つけたり。そんな時も必ず必要なのが信頼関係ですね。

法律があるからといって、裁判で白黒つけることが最善の解決方法ではないんですよ。

ーーでは、弁護士としてやりがいを感じるのはどんな時なのでしょうか?

そこは、もうシンプルに、依頼を受けて無事解決したときに、本当に感謝していただけることですね。「先生に頼んで良かった」と言ってもらえると「弁護士になって良かったな」と思います。そんな言葉をいただけるように日々、取り組んでいます。

ONtheは仕事とプライベートの切り替えポイント

ーー松田さんがONtheを頻繁に使うようになったのは、最近だそう。

ONtheの存在はオープン当初から知っていました。オープンしてすぐのイベントも何回か参加したことがあって、その雰囲気の良さも体験済み。ただ、事務所が神戸なので、それほど使うことがなかったんです。

頻繁に足を運ぶようになったのは、去年から。自宅を大阪市内に引っ越して、梅田が自宅と事務所の中継地点になったのがきっかけです。乗り換えの途中で、ONtheに寄ってちょっと仕事をしたり、事務所を早めに出て、自宅に帰る前にONtheで一気に仕事を終えてしまったり。仕事とプライベートを切り替えるちょうど良い中間地点でもありますね。

作業環境が整っているのも大きいです。気分によって選べるワークスペースや、安定した通信環境で、どんなスタイルでも仕事ができるのもONtheの魅力ですね。いつもいろんな方で賑わっているので、良い刺激になります。

フリーランスや起業する方の役に立ちたい

ONtheのようなコワーキングを利用されているフリーランスの方からのご依頼も多いですよ。契約書に関する相談や作成、リーガルチェックや契約後のトラブルの解決など。早い段階でご相談いただくほうが、早く解決することが多いです。だから、少しでも疑問に思うことがあれば、お気軽にご相談いただければ、と思います。

フリーランスや起業された方の支援は好きな仕事のひとつ。成長していく過程を一緒に体験できるのは楽しいし、お仕事の幅の広さもとても刺激的です。もちろん、今までの分野も引き続き担当しながら、これから自分の強みとして注力したいと思っている分野です。

編集後記

実は、私の中でも「弁護士に相談する」というハードルはとても高かったのですが、松田さんのお話を伺って、少しイメージが変わりました。

弁護士さんって思っていたよりも身近な相談できる存在なんですね。

それを知っているだけでも、これからの人生で大きなメリットになるかもしれません。

松田さん、休日は二人のお子さんとボードゲームを楽しまれるそう。

「かっこいい大人になりたいんです。子どもからもできる限りそう思われたい」という松田さんの夢、実はもうすでに実現しているのでは、とほほえましく思いました。

松田さんのホームページはこちら。

https://www.kobengoshi.com/