「幸せ」ということを、恥ずかしがらずに言えるようになって欲しい。
ONtheに関わる人々、利用する会員様にスポットを当ててその人生に迫るインタビュー特集「穏坐な人々」。今回は人事コンサルタントをされている、夏原美奈さん。現在は、東京の企業で主に人材教育を担当。積極的にセミナーや勉強会に参加して「仕事の幅を広げよう」と努力する姿勢や「人生をより豊かなものに」という前向きな考えにとても共感しました。
インタビュアー / コータロー
- 人事コンサルタント / 夏原美奈
- 人事に関する仕事に従事してきた経験を活かし、フリーの人事コンサルタントとして企業のコンサルティングを行っている。
今は東京の会社で主に人材教育を担当。セミナーや勉強会への参加のため、月に数回大阪に戻る機会があり、その時の仕事の場としてONtheを利用。
歩み始めた人事への道
今回お話させていただくのは、人事コンサルタントとしてご活躍されているONthe会員の夏原さん。「人事」と聞いて思い浮かぶのは、少し真面目でキッチリしたイメージ。書類の不備や提出期限を忘れて仕事を増やし、しょっちゅう人事の方に迷惑をかけている身としては「うまく話が噛み合うのか」「どう話を展開していこうか」と少し心配していた。 しかし現在は人事の枠を超えて色々なことを積極的に学び、それを会社へフィードバックされている。インタビュー当日もセミナーに参加するため、朝4時半に起きて東京から大阪まで来られていた。些細な心配事は杞憂に終わり、健康やコミュニケーション、さらには人生観まで、多くの気づきを与えてくれる夏原さんとのお話は夜遅くまで続きました。
− 今はフリーで人事コンサルタントをされているとお聞きしています。 まず初めに、社会人になられたあたりから、ざっと経歴をお聞きしてもよろしいでしょうか。
はい。卒業してからは結婚、出産、そして離婚まで、実は私それを25歳までに全部やっちゃったんです(笑) その後、社会保険労務士事務所に行くことになって、それから人事の道を歩み始めました。
− それはかなり突っ走りましたね(笑) 子育てしながら、ずっと働かれてたんですか?
そうですね。 今は子供も22歳になって就職しましたが、ほとんど休まずにずーっと働いてますね。
− それは凄いですね。仕事だけでも大変なのに、家に帰ってから家事と育児も・・・僕には絶対無理です(苦笑)
− 仕事は具体的にはどんなことをしてこられたのでしょうか?
うまくまわってない人事に対して、アドバイスや指導をして立て直す、という感じですね。 大阪にいる頃は「レストランの○○(某和食レストラン)」を4年かけてやらせていただいたり、あとは「テレビ○○(某関西TV局)」も担当させていただきました。
− 凄い、関西人ならみんな知ってますね。フリーの人事の人を雇う企業って、どういうことを求めて依頼されるんでしょうか?
人事の仕事って、お給料に関することや勤怠のこととか、法律に沿ってやらないといけなかったりするので、急に「あなた明日から人事やって」と言うわけにはいかないんです。源泉徴収票の見方とか、年末調整のこととかもちゃんと理解してないといけない。 だから急にはできないので、人事専門で派遣に行くみたいな感じ。そして私がいなくなってもちゃんとまわるような仕組みづくりをしてあげる。 ざっくり言うとそんな感じですね。
でも人事のことだけをやってるだけでは、だんだん物足りないと感じるようになって、セミナーに行ってNLPを学んだりしてました。
− NLPですか。僕も興味があって、一度勉強してみたいと思ってました。
NLPのセミナーの講師の方に 「アシスタントのようなことをやらない?」と誘われて、セミナーや勉強会のサポートのようなことをやっていました。 ずっと人事のカッチリしたことばかりやってきたので最初はピンと来なくて 「NLPは脳の取り扱い説明書・・・?」「は?何言ってるの?」って感じでしたね(笑)
2年前に東京の会社から人事の仕事の依頼を受けて、講師の方には「ごめんなさい~」と言って東京へ行くことになりました。
NLP(神経言語プログラミング)
神経言語プログラミングは、ジョン・グリンダー(言語学者)とリチャード・バンドラーによって提唱された、コミュニケーション、能力開発、心理療法へのアプローチを目指す技法である。
Neuro(神経)、Linguistic(言語)、Programming(プログラミング)
その頭文字をとってNLPと呼ばれている。
(Wikipediaより引用)
東京へ、そしてフリーランスに転向
− フリーに転向されたのは、東京へ行かれてから?
そうですね。去年の夏からフリーランスという形でやらせていただいてます。 今は人事からステップアップして社長室というところにいて、社長含め社員の教育をメインにやっています。 およそ120人の会社なんですけど、 社員全員と会って話すところから始めて、ひとりひとりカルテを作っています。 社長の教育、と言うと怒られるかもしれませんが(笑)、社長にも週に一回時間をとってもらって、ちゃんと話を聞いてもらってます。
人事という枠組みの中にいると、なかなか教育のことを全部やるのが難しかったり、それに「人事の人」という見られ方をされると完全に心を開いてくれなかったりするので、そういう面ではフリーの方がやりやすいですね。
− 社長とは、具体的にどんなお話をされるんですか?
これは社長に限らずですが、部下や下の立場の社員に対して「お前さぁ~、って言わないであげて下さい。ちゃんと〇〇さんって言ってあげて下さい」って、そのレベルから話しています。 草の根というか、ホントに凄く小さいところから。他人に対して思いやりを持つところからですね 。
− これはもう完全に勝手な想像でしかなんですけど、社長になるような人ってやっぱり物凄くバイタリティがあって発信力は凄い。でもあまり他人の話は聞かないイメージがあります(笑)
確かにNLPの話とかしててもやっぱり、反応が大きかったり食いつきが早いのは正直若い子の方が多いですね。 でも、仰る通り社長の影響力って凄く強いので、間違った影響力を与えると会社全体に影響してしまうんです。 社風を見ればなんとなく分かりますよね、ここの社長はこういう人なんだな~って。
社長や管理職、私たちはお金を生んでないんです。私たちは現場で頑張ってくれてる若い子達に支えられている。 あの子達はある意味、給料はそんなに高くないのに利益率は良いんです。「この子達がいるから、私たちもちゃんと生活できている」 ということを理解してあげて欲しい。
今の会社も数字だけじゃなくて人を見るようになり、そのために私を雇ったんです。数字を見なくても若い子を成長させていけば、売り上げはちゃんとついてくるんです。上の立場の方にはそれを意識して欲しいです。
− 是非、うちの会社にも来て話していただきたいですね(笑) 新入社員とか、比較的若い方とはどんなことを話されますか?
今って急に大企業が潰れたり、何があるか分からないじゃないですか? みんなに「明日会社が潰れても大丈夫」「自分にはこういうことが出来る」そう言えるものをここで身につけてもらいたい。 新入社員が来ると必ずそういう話をします。
子育てでも、今にして思えば「もっとこうすれば良かったな」って、後悔みたいなものもあります。私は25歳まででやることを全部やりきっちゃって、ちょっと疲れて・・・という経験もしました。だから自分が経験して分かったことを伝えてあげたい。今からの人生を楽しんで欲しいですね。
− 僕も仕事でリーダーを任されたりすることもあるのですが、よく「過去と他人は変えれない」って言うじゃないですか。遅刻とかもそうですけど、注意したり怒ったりして、他人のダメなところを変えるって難しいな、と感じることが結構あります。
難しいですよね。でも、例えば・・・私は今は外部の人間だけど、一番早く会社に行って鍵開けてるんです。私が率先して何かをやっていくことで、それが社員に浸透していけば良いなと思っています。そうしてただやって欲しいこと、ダメなことを言うだけでじゃなく、自分が変えていけば相手も変わっていくんじゃないかな、と思います。
「人生とは何か」って考えたことありますか?
− NLPの話がでましたが、NLPで学んだことも人材教育に取り入れてらっしゃるのでしょうか?
はい。企業にNLPを入れてるところはなかなかないですし。NLPというか生き方ですね。
例えば、「人生とは何か」って考えたことありますか?
− 人生とは?ですか。うーん、あまり深く考えたことはないですね・・・。
じゃあせっかくなので、一度考えてみて下さい。「人生とは?」と聞いて返ってきた答えが、その人の今の人生の価値観なんです。今まで、そして現在その人が直面している現実、思いがちゃんと言葉として出てくるんです。
例えば「人生とは、山あり谷ありです」って答える人は、その人自身がそう思ってるんです。「人生とは辛いものだ」と答える人は辛いんです。私だったら「人生とは楽しいもの」って答えます。
だからNLPをやって心理学を教えたいというよりは、長いようで短いこの人生を出来るだけ豊かにしてもらいたいし、人生の波の不調になるところを出来るだけフラットになるようにしてあげたい。 「人生とは?」と聞かれたら幸せにつながるようなものが答えであって欲しい。
幸せになることは、悪いことじゃない
− NLP以外では、何か新しく取り組みたいと思ってることとかありますか?
教育の中に健康を取り入れようと思ってて、「健康経営」とか聞いたことありますか?
− うちの会社でも「健康経営」を熱心に言ってる役員いますね。
毎日普通に楽しんだり、仕事したり色々やってるけど、全部健康の上になりたってることですよね。私自身、東京に行ってからのこの2年は大変だったので、今からは少し自分自身にも目を向けたいな、というのもあります。
「身体と心はつながってる」って言うじゃないですか。だから今は身体のメンテナンスをしたいなって思って、遺伝子検査をやってみたり、腸内環境も意識したりしてます。会社でも「それ、中に何が入ってるの・・・?」っていうドリンクを飲んでたり、毎日カップ麺ばかり食べてる社員さんいませんか?
− いますいます。 一応僕は自炊してお弁当も作って持って行ってますが、1週間同じメニューだったり冷凍食品が多かったりであまり人のこと言えませんが(苦笑)
「あなたの食べてるものが、あなたの健康そのものなのよ」って、若い子達、特にお母さん予備軍の子達にはすごい言ってます。
健康経営
健康経営(けんこうけいえい)とは、従業員の健康増進を重視し、健康管理を経営課題として捉え、その実践を図ることで従業員の健康の維持・増進と会社の生産性向上を目指す経営手法のこと。
(Wikipediaより引用)
− 最後に、このONtheを利用する人はセミナーなどに参加したり、積極的に何かを学びたいという向上心を持った若い人が多いと思います。そういう方へ向けて何か伝えてあげたいことはありますか?
そうですね。「幸せになることは、悪いことじゃないよ」って言ってあげたいですね。
幸せって言うことって恥ずかしかったり、何か変な罪悪感をもってたりする人が多いですよね。やりたいことがあっても、遠慮したり謙遜して人前で夢を語れなかったり。そういう自分の中のフィルターを外してあげたいですね。
毎日笑って過ごすことは悪いことじゃないし、「幸せです」ってみんながそう言えるようになることを願ってます。
編集後記
「こんな人がうちの会社にいてくれたら良いのに・・・」というのが、今回のインタビューを終わった後の率直な感想。自分ひとりだと思い込みや先入観にとらわれて、視野狭窄になってしまいがち。なかなかひとりで自分自身のフィルターを外すのは難しい。本を読んだり、誰かに助言やきっかけを与えてもらって初めて気づくことが多い。夏原さんはとても多くの「気づき」を与えてくれる人で、ただお仕事のお話を聞くだけでなく、自分自身を見つめなおす良い機会になりました。早起きだったにもかかわらず、終始笑顔でインタビューに答えて下さった夏原さん。ありがとうございました。
夏原さんから頂戴していた宿題、僕にとっての「人生とは」の回答ですが、帰りの電車の中で考えてみました。「人生とは楽しんだもの勝ち」というのが僕の答えです。「あなたにとって、人生とはどんなもの?」そう聞かれたら皆さんなら何て答えますか?是非一度考えてみて下さいね。
(文:コータロー、写真:今井剛)