
「いくつになっても人は変われる」NLPで見つける、自分らしい選択
インタビュアー / 大野 佳子
- NLPトレーナー / 立岩 和美
- 就職氷河期を経てさまざまな職場を経験し、IT業界ではSEとして10年以上勤務。その後、NLPとの出会いをきっかけに学びを深め、現在はNLPトレーナーとして講座やイベントを行う。一人ひとりが主体的に選び、自分らしく歩むための学びを届けている。
就職氷河期の経験から個人事業主へ―「いつか自分で仕事がしたい」
これまでのキャリアについて教えてください
私は就職氷河期世代で、事務職や営業職、アパレルショップの店長など、さまざまな職種を経験してきました。最も長く勤めたのはIT業界で、SEとして10年以上働きました。
雇用形態も正社員、派遣社員、契約社員と多様でしたが、どの働き方にもどこか不安定さを感じていました。また、いわゆる“ブラック企業”と呼ばれるような職場で働いた経験もあります。終電まで働く日が続き、時には一睡もせずに仕事をすることもありました。当時は、そんな働き方が当たり前とされる風潮だったかもしれません。
そうした中で、「どうせこんなにもしんどい仕事をするなら、いつか自分で仕事がしたい」という思いを抱くようになりました。
それからは、ビジネス書や自己啓発書を読み漁りました。ところが、本に書かれた理論や知識を理解できても、それをどのように実践すればよいのかが分かりません。試行錯誤しながら調べていく中で、NLP(エヌエルピー)を知りました。20代後半のことでした。
NLPとはどのようなものなのでしょうか?
Neuro Linguistic Programmingの略称で、日本語では「神経言語プログラミング」と訳されています。
NLPは、人が情報を受け取り、言葉にし、行動に移すまでのパターンに着目した実践的な心理学です。言葉の使い方や物事の捉え方を見直し、望ましい思考や行動へとつなげていきます。1970年代のアメリカで、リチャード・バンドラーとジョン・グリンダーによって開発されました。
NLPは医療行為ではなく、コミュニケーションや自己理解に役立てるための手法です。
どのようにNLPを学ばれたのでしょうか?
私がNLPを知った当時は、まだ情報が少なく、インターネットで検索しても、出てくるのは英語の本ばかりでした。書籍の講師陣にも見知らぬ外国人の顔が並んでいて、「もしかして、怪しい…!?」と思わず身構えてしまいました。
当時、本格的に学ぶにはアメリカへ行く必要があり、まとまった時間と費用もかかりました。私にとっては現実的に難しく、一度はNLPを学ぶことを断念しました。
ところが、コロナ禍が転機になりました。オンラインで学ぶことが一般的になり、日本でもNLPのセミナーを開催する団体が増えていたんです。「在宅で過ごす時間が増えた今なら受講できる」と思い立ち、本格的に学び始めました。
その後も学びを重ね、全米NLP協会認定トレーナー、全米NLP協会コーチングディビジョントレーナー、タイムライン・セラピー®認定トレーナーの資格を取得しました。現在は、個人事業主として活動しています。
「人前で緊張していた自分と、上手く付き合えるように」NLPを通じて起きた変化
NLPを通じて、ご自身にはどのような変化がありましたか?
私は、「人に迷惑をかけてはいけない」という気持ちを強く持っていた子どもでした。親が厳しかったことや、一人っ子として育ったことが影響していたのかもしれません。
小学生の頃、授業で手を挙げて発言しようとすると、頭が真っ白になり、手が震えだし、声が出せなくなってしまうことがありました。友達とは普通に話せるのに、人前に立つと緊張して話せなくなる――。それ以降も、ずっと人目を気にしながら過ごしてきたように思います。
ところが、NLPを学ぶうちに、「情報の受け取り方やものの見方は、人によって全く違う」ということを、深く理解できるようになりました。すると、「周りをそんなに気にしなくてもいい」と、自然に思えるようになったのです。人前に立つと、手が震え、声も出せなかった頃の自分からは、全く想像できない変化でした。今では、以前ほど緊張することもなくなっています。
「苦手の克服」や「自己変容」は、“気合い”が大事なのだと思っていました。
もちろん、気合いから行動に移せる人もいらっしゃいます。ですが、気合いだけではストレスがたまる場面も多いのではないでしょうか。それに、どのような方法であっても、自分の課題に向き合うときには「心のブロック」が生じることがあります。
NLPには、意識的に努力するだけでなく、自分でも気づいていない思考の癖や物事の受け止め方に目を向ける方法もあります。そのため、無理のないかたちで、変化への一歩を踏み出しやすくなるように思います。
現在の私は、緊張しやすい自分とも、上手く付き合えるようになりました。それは、NLPを学んで、自分の考え方や物事の捉え方が大きく変わったからです。いくつになっても人は変われるのだと、身をもって実感しました。だからこそ、NLPは知識としてとどめるのではなく、実際に体験することが大切なのだと思います。
メディエーションとNLP~コミュニケーションを支える二つの視点~
「社内メディエーターⓇ養成講座」で講師を担当されているとお聞きしました。
竹内陽子さん(合同会社ハートフルメディエーション 代表)が主宰する講座で、NLPのお話をさせていただいています。
メディエーションとは、対立する人と人が、中立の第三者(メディエーター)を介して、対話を軸に問題解決を行う手法です。その中でも「社内メディエーターⓇ」は、企業内で起こる対立やコミュニケーション上の課題に向き合い、当事者同士の対話や信頼関係の修復を支える役割を担います。
社内での対立は、上司と部下、経営者と社員など、さまざまな立場や関係の中で起こり得ます。また、単なる人間関係の問題にとどまらず、休職や離職、生産性の低下などにつながる可能性もあります。
私自身、メディエーションとNLPはとても相性が良いと感じています。
NLPには、「人は事実そのものではなく、自分なりの解釈に反応している」という考え方があります。一方、メディエーションでは、事実と感情を分けて捉えます。二つの視点には重なる部分があり、両方の良さを生かすことで、社内のコミュニケーションをより安心で円滑なものにできると思っています。

対人関係の仕事で大切にしていることをお聞かせください。
人には、最初に聞いた人の話に引きずられやすい傾向があります。だからこそ、まずは自分自身の状態を整えることが大切だと思います。自分が不安定だと、それが相手に伝わってしまうこともありますし、出来事を俯瞰して捉えることも難しくなります。
口で言うのは簡単ですが、実際に、目の前で起きている事実と自分の感情を分けて捉えられるようになるには、ある程度の訓練が必要なのだと感じます。
というのも、実は私自身、「社内メディエーターⓇ養成講座」を受講している生徒でもあります。講座を通して、対人関係における距離感や中立的な関わり方について、ビシバシ鍛えていただいているところです。
ONthe UMEDAはパワースポット!人とのつながりが生まれて広がっていく場所
どのようにONthe を利用されていますか?
ONthe を知った当時、私はまだNLPセミナーの受講生でした。ONtheでさまざまなイベントやセミナーが開催されているのを見て、「NLPの資格を取れたら、いつか私もここでイベントを開いてみたい」と、密かに思っていたんです。
現在は、普段のフロア利用に加えて、念願だったNLPに関するイベントも開催させていただいています。
ONtheは、堅苦しさがなく、居心地の良い場所だと感じています。イベントに参加してくださる皆さんとも、自然体で気軽にお話しできる雰囲気があります。
「社内メディエーターⓇ」の竹内陽子さんをはじめ、ONtheで出会った方々とのご縁をきっかけに、活動の幅もどんどん広がっています。「ONtheって、実はものすごいパワースポットなのでは!?」と感じています。
この夏にも、8月26日の「ONthe café」で、心理カウンセラーの村上明さんと一緒にマスターを務めます。テーマは「心理学 × コーチング × 休み明けの仕事スイッチ」です。お気軽にご参加いただけるとうれしいです。

「自分らしく人生を歩める人が増えてほしい」
これからの展望をお聞かせください
より多くの人にNLPを知ってもらいたい。そんな思いから、現在、NLPを学べるスクールの開講準備をしています。スクールでは、NLPの資格取得に向けた講座を行う予定です。また、「資格までは必要ないけれど、NLPについて学んでみたい」という方に向けて、コミュニケーションや心理学に関するセミナーも開催したいと考えています。
「ネガティブな気持ちが少しでもプラスに変わった」
「目標に向かって、取り組んでみようと思えた」
NLPを通じて、そんな心の変化が少しでも生まれたなら、それは一つの成果です。ビジネスや人生のあらゆる場面で、自分の道を主体的に選択し、自分らしく歩める人が増えてほしいと思います。
そして、NLPを学ぶことは、自己理解を深めるだけでなく、他者理解にもつながります。お互いの違いを知り、認め合いながら、安心してコミュニケーションをとれる関係が広がっていけばいいなと思っています。そんな思いを持ちながら、これからの活動を続けていきたいです。
編集後記
「わかっちゃいるけどやめられない」
それが人情というものだと思っていました。けれど、立岩さんのお話を聞くうちに、「人って、そんなふうに変われるんだ!」と、私の中にあった思い込みが少しずつほどけていきました。
インタビューを終えた後も、心にはほんのりと温かな余韻が残りました。NLPのお話はもちろん、立岩さんのお人柄にも、そっと心をほぐしていただいたような時間でした。
Curio Labo 立岩 和美さん
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(文:大野 佳子、写真:中山 雄治)







